海外の事例から学ぶ障害者支援の国際的なトレンド

海外における障害者支援の事例や福祉制度のモデルケースは、各国の歴史や社会構造、政策などによって異なるものの、わが国でも大いに参考にできるポイントが多くあります。

ここでは海外の障害者支援の事例を紹介し、どのように日本で活用できるかを考察していきます。

スウェーデン：パーソナルアシスタンス制度

スウェーデンは世界有数の福祉国家として知られており、多くの先進的な制度が運用されていますが、中でも注目したいのは「パーソナルアシスタンス制度」です。これは障害者一人ひとりに専任のアシスタントがつき、日常生活や外出のサポートを提供する仕組みです。支援の範囲は個々のニーズによって幅広く、食事や入浴、通院など、日常生活に必要な活動のほとんどがサポートされています。

この制度の最大の特徴は、利用者がアシスタントを選べるという点です。利用者自身がどんな支援を望んでいるかを主導的に決定できるので、支援内容が個別化され、利用者の自立性も高まります。この「自己決定権」を尊重するアプローチ方法は、わが国も参考にすべき重要なポイントです。

日本でもこれに近い支援は行われていますが、スウェーデンのように自己決定権の強化、支援の個別化をさらに推進することで、利用者にとってより自由度の高い生活が実現するでしょう。

デンマーク：インクルーシブ教育

高福祉高負担国家のデンマークは、ノーマライゼーション発祥の国ともいわれ、インクルーシブ教育の分野でも先進的な取り組みを進めてきました。障害を抱える子どもたちも通常の学校で学ぶことで、健常者と同じ環境で共に成長し、相互理解も深まっていくことが期待できます。そのため学校には特別支援教員が配置され、障害を抱える子どもは特別な配慮を受けつつも、他の生徒と同じカリキュラムを学べるように個別の支援プログラムが用意されています。

インクルーシブ教育の考え方は、障害者を社会の一部として包摂するという理念に基づいています。わが国においては特別支援学校の存在が重視されますが、より多くの障害児が一般の学校で学べる環境も整えていくことが、結果として障害者の社会参加を促進する一助になるでしょう。

たとえば、教育現場へのユニバーサルデザインの導入や、特別支援教育の専門家の配置が、子どもたちへの平等な教育の機会の提供につながります。

オーストラリア：NDIS（National Disability Insurance Scheme）

オーストラリアの「NDIS（ナショナル・ディスアビリティ・インシュアランス・スキーム）」は、障害者支援における革新的な制度として各国の注目を集めています。これは障害を抱える個人に直接的な資金援助を実施し、個別の支援計画に基づいて必要なサービスを受けられるようにする仕組みです。

NDISの大きな特徴は、利用者が自らのニーズを積極的に評価し、支援計画を立てるプロセスに関与する点です。これは利用者が自身の生活を主体的に管理することが目的であり、自己決定が重視されたアプローチだといえるでしょう。そしてNDISは国全体で統一されたシステムなので、地域差なくどのエリアでも同水準の支援を受けられます。

NDISのように個別支援計画に利用者自身が大きく関与する仕組みは、さらなる自己決定の拡充として日本でも参考にできそうです。

まとめ

海外における障害者支援の事例からは多くの学びが得られ、わが国でも有効に応用できるモデルケースが多くあります。それらを国連の障害者権利条約と照らし合わせて考えると、日本でさらに推進すべきポイントとしては、「障害者の自己決定権の強化」「インクルーシブ社会の推進」「個別支援の柔軟化」といったことが挙げられます。

これらを実現するための仕組みを整備していくことが、わが国の障害者福祉のさらなる発展につながっていくでしょう。